人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
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菅沼院長の元気で長生き講座
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第146回 元気で長生き講座【2024年11月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~透析患者様は低アルブミン(Alb)血症を来さないよう蛋白(タンパク)質の多い食事(卵・肉・魚・豆腐や納豆等の大豆製品)をお勧めします!~

 

毎月の血液検査の結果の際、血清アルブミン値(Alb)について触れられることがあると思います。Albは血液中の蛋白(タンパク)質の一種でその約40%が血管内に、残り60%が血管外(細胞や組織間液中)に分布しており、主に、栄養・代謝物質の運搬、浸透圧の維持などの働きをしています。また栄養状態を評価する際に、低栄養になっていないか調べる指標となっています。タンパク質の摂取不足や消化吸収障害により、Alb値が低下してしまいますので、特に食事量が減ってしまう高齢者はAlbが低下する傾向にあります。

このAlbについて、来る1123日に長崎で開催される第30回日本血液透析濾過医学会 学術集会・総会にて発表を行いますので、その内容の一部もご紹介します。

 

Albには、下記の2つ等多くの働きがあります。

 

①水分を保持し、血液を正常に循環させるための浸透圧の維持

 

Albによって生じる浸透圧は、「膠質浸透圧」〔こうしつしんとうあつ〕と言います。Albは血漿タンパク中、最も多く存在し、かつ比較的低分子量のために分子数が多く、血液の膠質浸透圧に及ぼす影響は大きくなります。血液の全膠質浸透圧の約80%も担っており、水分を保持することにより循環血液量を保ちます。Albは過剰な組織中の体液を血管中に引き込み、その結果循環血液量を正常化します。

 

②体内のいろいろな物と結合し、これを目的地に運ぶ運搬作用

 

Albはいろいろな物質と結合する力が強い血漿タンパク質です。カルシウム(Ca)や亜鉛(Zn)などの微量元素や、脂肪酸、酵素、ホルモン、薬などと結合します。概して、物質を結合することでAlbは安定度が高まります。例えば、Alb1分子は脂肪酸の2分子と強く結合して、Albを更に安定化しています。そして、Albは、これらを体の必要とする目的部位へ運搬します。また、毒性物質と結合して緩和(中和)する作用もあります。物質がAlbと結合することで、その物質の血中濃度が低下します。このため毒物の中和作用が働きます。

 

透析治療における生命予後との関連についても多くの報告があります。Maryam Pakfetratらの研究1によると、透析低血圧と低Alb血症とCRP高値が関連しており(低Alb血症に伴う血管内の膠質浸透圧低下が血液透析時の除水に伴う血圧低下を引き起こしてしまうことが考えられます)、また菊池勘先生らの研究2では低Alb血症とCRP高値が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後死亡と関係していることが明らかとなっています。

 

 

また、Alb値や重炭酸濃度が低いほど心臓の冠動脈石灰化が高度の岡先生らの報告3もあり、Albは血管壁の石灰化による動脈硬化を予防してくれることも考えられます。

 

 

つまり、Albは恒常性の維持・生きていくうえで必要不可欠なものであり、Alb値が下がると生命に影響が及びます。具体的には、血清Alb濃度 3.3g/dL以下にならないよう、特に、生命予後不良も報告されております腎疾患ネフローゼ症候群の診断基準の3.0g/dL以下は危険です。良好な生命予後(長生き)の為にも血清Alb濃度の目標値は3.6g/dL、可能であれば3.8 g/dL以上が理想と考えられます。従って、低Alb血症を来さないよう、透析患者様はタンパク質の多い食事(卵・肉・魚・豆腐や納豆等の大豆製品)を日頃よりなるべく摂取をお勧めします。更に歩行や筋肉トレーニング等の運動を積極的に行って頂くことで摂取頂いたタンパク質が筋肉の元となり転倒やフレイルの予防にもつながり尚良いでしょう!

 

参考文献・記事

1)M Pakfetrat, J Roozbeh, L Malekmakan, et al. Relation of Serum Albumin and C-Reactive Protein to Hypotensive Episodes during Hemodialysis Sessions. Saudi J Kidney Dis Transpl 2010; 21(4): 707-711

2)K Kikuchi, M Nangaku, M Ryuzaki, et al. Survival and predictive factors in dialysis patients with COVID‑19 in Japan: a nationwide cohort study. Ren Replace Ther. 2021;7(1):59.

3)M Oka, T Ohtake, Y Mochida, et al. Correlation of coronary artery calcification with pre-hemodialysis bicarbonate levels in patients on hemodialysis. Ther Apher Dial 2012;16(3):267-71.