第138回 元気で長生き講座【2024年3月号】
~ウォーキング(歩行)を含む運動と手洗いなどの感染対策継続をお勧めします~
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第10波と言える状況があります。2024年2月4日までの全国新規患者数は7万9605人で、1医療機関あたり平均患者数は16.15人と報告されました。これは11週連続で増加の一途をたどっています。ただ、2024年2月末現時点では10.1となっており一見下がったように見えます1)。しかし、札幌市が行っている下水サーベランス(下水中のウイルス量の測定)では、ここ3週くらい急増しています2)。最新の数値は先月末の時点より4倍以上に増加していて油断できない状況です。
感染予防には、手洗い、手指消毒、換気、そしてマスクの着用が基本ですが、重症化を防ぐには、日頃の歩行を含む運動が有効です。透析患者様におかれましても一日の歩数が多い方ほど長生き3)されていることを昨年末紹介させて頂きました。アメリカでCOVID-19患者と運動習慣の関係性について、COVID-19に罹患した成人19万4,191人の、2020年1月~2021年5月のEHR(Electronic Health Record:電子健康記録)を調べた結果、COVID-19に罹患する前の歩行などの運動や身体活動の習慣について、「ほぼ運動しない」人は、「中等度の運動をする」、「よく運動する」人に比べて入院リスクは91%高く、重症化リスクは139%高く、死亡リスクは291%も高いことが分かりました4)。運動量の増加は、高血圧、糖尿病、肥満などの慢性疾患のある患者の入院率や死亡率低下にも関連しており、また、慢性疾患の有無にかかわらず、運動習慣のある人はそうでない人に比べ、COVID-19の重症化リスクが低く、さらにより多くの運動を行った人は、重症度はさらに低下する傾向が示されました。
スペイン・バレンシア大学のYasmin Ezzatvar氏らの研究チームは、それまでに発表されたCOVID-19に関する研究文献の中から16件を選んでデータを抽出し、分析を実施しました。合計185万3610人の成人のデータが含まれたこの研究では、54%は女性、平均年齢53歳でした。また、研究が行われた地域は韓国・イギリス・イラン・カナダ・スペイン・ブラジル・パレスチナ・南アフリカ・スウェーデンでした。分析の結果、日常的に定期的な身体活動を行っている人は、COVID-19に罹患するリスクが11%低いことが分かりました。さらに、運動している人は運動不足の人に比べ、COVID-19での入院リスクが39%、重症化リスクが44%、死亡リスクも43%低いことが判明しました5)。
また、アメリカのハーバード大学医学部の関連病院ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者らが主導した新たな研究6)では、2020年にパンデミックが始まる前に身体活動レベルが高かった人は、COVID-19に罹患したり、重篤な入院を必要とするCOVID-19を発症する可能性が低かったことが示されました。研究は、進行中の3つの前向きコホート試験の2020年5月~2022年5月のデータを解析したもので、対象となったのは45歳以上の成人6万1,557人です。具体的には運動ガイドラインで推奨されている量の運動をこなしている人は、そうでない人に比べ、COVID-19への感染が10%減少し、入院リスクは27%低く、特に女性では、運動習慣により得られる恩恵は大きいといいます。
COVID-19は予断を許さず、今までの傾向を見ても今後波を繰り返すと予測されます。接種が推奨されるワクチンも無料ではなくなるため、予防には今まで以上に注意が必要です。接触感染経路は目・鼻・口であり、何か触った手で顔を触らないことが米国New YorkのDavid Price医師は最も大事と述べています。鼻をほじると感染リスクが上がる報告7)も昨年なされました。鼻に何か触った手が直接触れないよう、外出時や特に飛沫が飛ぶ発声時は、鼻までマスクの着用、また何か触った後、帰宅時、お食事前やお薬服用前などの際に手洗いが推奨され、本院へご来院時は玄関前と第二透析室エレベータホール前の体重計近くに設置されたオゾン水手洗い装置ハンドレックス®ご使用を重ねてお願いいたします。ハンドレックス®は石鹸不要で、装置内の中央部にセンサーがあり、装置内の真ん中に両手を入れて頂き、オゾン水が出てきたら、装置前面のランプ点灯場所が左から中央を経て右まで移動しオゾン水が止まる迄、装置内で手洗いをされて下さい。手洗い後は綺麗なハンカチなどで濡れた手を拭きましょう。アルコールによる手指消毒より乾燥する冬に多い手荒れが有意に少なく8)、同等の効果が得られます。
参考