第135回 元気で長生き講座【2023年11月号】
~疾患の発症や重症化の予防のために各種ワクチン接種をお勧めします~
感染症にかかると体の中で抗体などが作られ、新たに外から侵入する病原体を攻撃する仕組みを「免疫」といいます。免疫システムを利用したのが「ワクチン」です。ワクチンを接種することにより、あらかじめウイルスや細菌(病原体)に対する免疫(抵抗力)を作り出し、病気になりにくくします。まれに熱や発疹などの副反応がみられますが、実際に感染症にかかるよりも症状が軽くなる、周囲に移すことがない等の利点があります。
ワクチンの使用は18世紀末にエドワード・ジェンナーが天然痘に対する免疫を獲得させる方法を発見したことが歴史上最初です。天然痘は致死率の高い感染症で、古来より多くの命を奪ってきた疾患ですが、18世紀末ジェンナーは牛痘(牛の天然痘)に感染した乳搾りの人が天然痘にかからないことに着目しました。牛痘にかかった牛からうみ(膿)を取り出し健康な人につけ、人工的に牛痘にかからせます。牛にとっては致命的な病気ですが、人は軽い症状で済みます。その後人間の天然痘ウイルスに感染させてみたところ、発症や重症化しないことを見つけました。その後世界中にこの手法が広がり、日本では1956年以降国内で天然痘は確認されておらず、1980年「世界根絶」が発表されました1)
最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、1.コロナワクチンに注目が集まり、本院でも接種を行ってきており今後も定期接種をお勧めいたしますが、本院ではその他にも、自費接種にはなりますが任意の下記各種ワクチン接種を行っておりますので、ご希望される患者様がおられましたら、スタッフへお申し出下さい。なお、ワクチンを接種する前に抗体価(ご自身がその病気に対する免疫を持っているか)の検査を行う場合がございます。また、接種はすべて予約制となります。ただし本院では小児の接種は実施しておりません。
ワクチン(任意接種)
2.23価肺炎球菌ワクチン 1回 8,000円
平成26年10月1日より、高齢者肺炎球菌ワクチンが定期接種になりました(助成対象)。毎年1回、対象者には接種予診票、お知らせ、医療機関一覧表が発送されます。過去に1度でも助成接種されている方は、新たな助成は受けられませんが、一度接種すれば効果は5年持続します。
3.インフルエンザワクチン 1回 3,500円
毎年10月から翌1月までの接種となります。市区町村助成による子どもインフルエンザ予防接種は本院では実施しておりません。市区町村発行の高齢者インフルエンザ予防接種助成券をお持ちの方は受付にお渡し下さい。
4.おたふくかぜワクチン 1回 6,600円
今までワクチン接種を2回行っていない人、おたふくかぜに感染したことがない人はワクチンを接種しましょう。1回目の接種後、28日以上あけて2回目の接種を行います。
5.MR(麻しん・風疹)ワクチン 1回 10,000円
成人がかかると重症になることが多く、とくに妊娠初期の妊婦が風疹にかかってしまうと赤ちゃんが先天性風疹症候群を持って生まれる危険性があるため、成人にも接種が推奨されています。
6.B型肝炎ワクチン
ヘプタバックス 1回 8,000円
ビームゲン 1回 8,000円
4~6ヶ月間に3回の接種を行うことで、B型肝炎と将来の肝がんを予防できるとされています。母親が妊娠中に検査を行ってB型肝炎キャリアであることがわかった場合は、母子感染予防として、健康保険で接種できます。
7.帯状疱疹ワクチン
ビケン 1回 8,000円
シングリックス 1回 22,000円(全2回)
発症予防効果 | 神経痛予防効果 | 効果持続 | 回数 | |
ビケン | 約50% | 33% | 5年 | 1 |
シングリックス | 90%以上 | 88% | 9年以上 | 2 |
帯状疱疹の発症率は50歳以上で増加し、50代、60代、70代と加齢に伴ってさらに増加します。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)への移行リスクも加齢とともに高くなるといわれています。そのため、帯状疱疹の発症自体を予防することは重要と考えられます。なお、帯状疱疹のワクチン接種の対象は、主に50歳以上の方です。世田谷区では、令和5年7月より帯状疱疹ワクチンの接種費用が一部助成されています。効果が高いシングリックスをお勧めいたします。
透析患者様を含む慢性腎臓(CKD)病患者様を対象とした帯状疱疹ワクチン接種にて帯状疱疹罹患リスクが45%も低下し、副反応の増加が無かったことが報告されています。この報告では、CKD患者様における帯状疱疹罹患率が高いため、帯状疱疹ワクチン接種が積極的に考慮されるべきと述べられています2)。
7. RSウイルスワクチン
アレックスビー 1回 27,000円
参考URL/文献
1)https://www.med.or.jp/doctor-ase/vol40/40page_id03main2.html