第118回 元気で長生き講座【2022年5月号】
~食事制限なしの長時間透析は透析アミロイドーシスのリスクを軽減します~
私を第11回長時間透析研究会大会長に推薦して下さり、長時間透析の素晴らしい世界に私と本院患者様を導いて下さった長時間透析研究会初代(前)会長かもめクリニック金田 浩先生よりご紹介頂いた金田先生が共著者の昨年発表された最新論文1)を紹介します。
食事制限のない長時間の血液透析は透析関連アミロイドーシスの発症リスク低下と関連する
<要約>
食事制限のない血液透析において、透析時間が透析関連アミロイドーシス(DRA)発症リスクに及ぼす臨床的影響を後ろ向きに評価した。食事制限のない血液透析を11年以上受けている患者30名を、1週間の透析時間が16.5時間/週以上のL群15名(男性7名、女性8名、平均57.7±12.2歳)と、15.5時間/週以下のS群15名(男性4名、女性11名、平均55.7±13.2歳)に分けた。X線単純撮影と超音波検査により、骨の嚢胞性放射線透過性と軟部組織の厚さ/直径を評価した。その結果、手根骨の嚢胞性放射線透過性の割合はL群の方が低かった。手首の正中神経圧迫の重症度はL群で有意に低かった。重回帰分析では、透析時間が正中神経圧迫の予測因子であることが示された。これらの結果から、食事制限なしの長時間透析は、手首のDRA発症リスクを下げることが示唆された。
本院の過去の発表でも示しましたが、血液透析濾過(HDF)開始後もβ2マイクログロブリン(β2MG)値の有意な低下は得られていませんが、長時間透析開始半年後β2MG値が有意に低下し、β2MG低値の患者程生命予後良好や血流量が高い程、透析時間は長い程β2MG除去率が高いことが、日本透析医学会(JSDT)の統計調査結果でも示されています2,3)。
なお、血液透析(HD)よりもHDFの方がβ2MGは抜けやすくDRA予防に優れることがと言われていますが、同じくJSDT統計調査結果4)では、HD・HDF療法別で見たβ2MG値に差がなかったと報告されています。その中でも、長時間透析を実施しやすい在宅血液透析(HHD)で最もβ2MG低値が示されており、生命予後やDRA予防の観点からも引き続き長時間透析をお勧め致します!
昨年12月30日かもめクリニック金田先生と菱田 学先生が、本院へご見学にいらっしゃいました際、上記素晴らしい最新論文をご紹介下さり、後日お葉書で過分なお礼の下記お言葉を頂戴しました。いつも有り難うございます。
菅沼先生へ
ご多忙のところを長時間にわたり「施設の紹介」「アイデア溢れた色々な工夫」「ご著作の紹介」など多くの先生のご努力に感激しました。菱田先生には得るものが多かったようです。この度は、本当にありがとうございました。
1)Tabata Shiroh,Kaneda Fumika,Ohwada Kazunori,et al. Extended-Hours Hemodialysis without Dietary Restrictions Is Associated with Lower Risk for Developing of Dialysis-Related Amyloidosis. The Tohoku Journal of Experimental Medicine 2021,253(4):241-8
2)日本透析医学会統計調査委員会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2009年12月31日現在)日本透析医学会,東京,2010
3)日本透析医学会統計調査委員会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2008年12月31日現在)日本透析医学会,東京,2009
4)日本透析医学会統計調査委員会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)日本透析医学会,東京,2018