第116回 元気で長生き講座【2022年3月号】
~新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のご案内~
第6波のピークは過ぎた模様ですが、依然感染者数は多く予断を許さない状況です。ファイザー社製(コミナティ筋注®)、武田/モデルナ社製(モデルナ筋注®)、アストラゼネカ社製(バキスゼブリア筋注®)等各種ワクチンの効果を調べた結果、海外より最も効果があるのは1~2回目ファイザー社製⇒3回目モデルナ社製、次に効果が高いのは3回ともファイザー社製接種と報告されていますので、3回目のワクチンの種類が選べる場合は参考にしましょう。いずれにしても、ワクチンは透析患者様においても効果を認めていますので、感染、入院、重症化、死亡、後遺症状の全てに対しワクチンの予防効果が報告されており接種が完了していない方におかれましては、是非とも接種をお勧めします。20歳台の方も2万人に一人は死亡している為若年者にもお勧め致します。
マスクは不織布(ふしょくふ)、布、ウレタンがありますが、効果が高い不織布マスクを鼻や頬部のフィットを良好にして使用する事を強くお勧め致します。COVID-19は発症前の無症状時から感染力がある為、常時マスクを着用して頂き、会話時にマスクをはずすことは飛沫が飛ぶ原因になるので絶対に避けましょう。本院でも感染されてしまった透析患者様が複数出ていますのでウイルスの透析室内への侵入予防の為にも、来院時及び随時手指衛生(手指消毒もしくは手洗い)を重ねてお願い致します。
治療は抗ウイルス薬が中心となりますが、これまで本院外来で投薬可能な抗ウイルス薬は唯一オセルタミビル(タミフル®:37.5度以上の発熱時に直ちに1C内服頂き、ご来院前に本院にご連絡ください。裏口からのご来院や個室透析をご案内させて頂きます)だけでしたが、待望の新薬が使用可能になりました(別紙表)。カモスタットは第3相試験で有効性が示されなかった事と新薬登場により、使用の機会は減少しています。
〇モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル®)
抗ウイルス剤と呼ばれるグループに属する薬です。新型コロナウイルスのRNAに取り込まれることにより、ウイルスの増殖を阻害します。COVID-19の症状が現れてから早期に使用が開始され、通常成人の場合1回4カプセル、1日2回5日間服用します。食事の有無にかかわらず飲むことができ、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲みます。体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。本院外来でも投薬可能ですが、現在在庫を抱えることが出来なくなり、COVID-19診断確定時に発注しますので、到着するまでは、これまで通りオセルタミビル1C内服後次頁酸素ステーションご紹介も考慮致します。
〇ソトロビマブ(ゼビュディ®)
点滴静脈注射の新しい中和抗体薬であり、COVID-19における酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いと考えられる患者様を投与対象としています。ソトロビマブは500mg1回のみの単回投与で、重症化リスクの高い軽症から中等症のCOVID-19の成人患者様において、入院や死亡のリスクが有意に低下することが示されています。先行していた抗体カクテル療法の中和抗体薬ロナプリーブ®よりも副作用が少ないようです。
現在ソトロビマブは、入院病床を要する病院の他、都内では酸素・医療提供ステーションや一部の待機用宿泊施設で投与されています。酸素・医療提供ステーションは、軽症~中等症の患者様に対して、酸素投与や中和抗体薬治療等の医療を提供する施設です。現在都内5か所(都民の城、調布庁舎、築地、赤羽、練馬)に設けられています。ソトロビマブを1泊2日の短期入所により投与することができます。申し込みは医療機関から行います。利用条件として自立歩行可能な方に限定されています。食事・トイレは自身で行う必要があります。赤羽酸素ステーションでは、血液透析(HD)ベッド数10床あり、透析は火・木・土・日に行われています(一日の受け入れ最大人数25~30名)。
モルヌピラビルもソトロビマブも中等症以下の症状に対応しているため、重症化した場合入院が必要となります。透析患者様がCOVID-19に罹患した場合は原則入院対応でしたが、現在中等症以上の方が優先となっており入院先が決まらない場合は外来施設での維持透析を継続せざるを得ず、治療としてはモルヌピラビルを内服頂くか、ソトロビマブを投与頂ける酸素・医療提供ステーションをご紹介致します。