第114回 元気で長生き講座【2021年12月号】
~長時間透析ではリン(P)吸着薬が減らせます~
先月21日にウェブ(Web)開催された第16回長時間透析研究会にて菅沼が座長を務めた一般演題での下記ご発表を紹介します。茨城にある長時間透析施設(平均透析時間:22.3±2.8時間/週!)かもめ日立クリニックの金田史香先生のご発表で、Pの除去はもとより食事制限が緩和出来ており、慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常(CKD-MBD)管理が大変良好にできている報告でした。本院でも毎年年末結果を日本透析医学会統計調査委員会に報告しており、その結果と下記ご発表の透析時間と③、④の比較を行い、下記表を作成しました。現行の日本透析医学会ガイドラインにてCa8.4~10mg/dL、P3.5~6mg/dL、i-PTH60~240pg/mLが目標値で、生命予後との関連から最もコントロールすべきはP値とされています。特に最も重要なP値のガイドライン達成率は長時間透析施設のかもめ日立クリニックは大変良好です。P値は高いと異所性石灰化を来たし予後不良につながりますが、低くても栄養状態不良が考えられ予後不良につながりますので、しっかりと蛋白質を摂取してP値が低くならないようにする事も大事です。実際、頻回透析による透析量増加により、蛋白質摂取量、アルブミン値や体重が有意に増え、栄養状態の改善が報告(Rita S Suri, et al: Daily hemodialysis: a systematic review. Clin J Am Soc Nephrol. 1(1):33-42,2006 doi:10.2215/CJN.00340705)されており、かもめ日立クリニックでは週4回透析の頻回透析の方やBMI高値の栄養状態が良い方も多くいらっしゃいます。驚くべき事に長時間透析施設のかもめ日立クリニックのリン吸着剤使用量は平均でわずか4錠であり、長時間透析ではP吸着薬が減らせる事が示唆され、第11回長時間透析研究会にて医療法人光穂会 森のクリニック鈴木紀子先生が「長時間透析における医薬品使用量の検討」を口演され、8時間のオーバーナイト透析開始後、降圧剤、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)と共にP吸着薬が減らせた事を報告しております。
カテゴリー:04 一般演題
かもめ日立クリニックでの長時間透析加療における CKD-MBD管理
かもめ日立クリニック 1 かもめみなとみらいクリニック 2
金田 史香 1 金田 浩 2
【対象】2020年1月1日から12月31日までかもめ日立クリニックにて透析加療を受けた81名の患者。
男性/女性(人)52/29 年齢(歳)68.2±12.2、透析歴(年)12.5±8.4
【対象患者BMI】18未満:3.7% 18~24未満:51.8% 24以上:44.4%
【対象患者透析時間と回数】平均透析時間22.3±2.8時間/週 週3/4回:54/27人
【方法】
- CKDMBD治療薬(カルシミメティクス ビタミンD受容体作動薬(VDRA) P吸着剤)使用率
② リン吸着剤の併用率と平均服薬錠数/日
③ Ca P i-PTH管理状況:平均値、ガイドライン達成率
④ Ca/P ガイドライン目標値達成率
【結果】
① 使用率:カルシミメティクス 59.3% VDRA 51.9% リン吸着剤 66.7%
② リン吸着剤の併用率 平均服薬錠数:
単剤 90.7% 2剤 16.6% 3剤 1.8% 錠数:4.0錠/日
- 平均値 ガイドライン達成率:表
- Ca/Pガイドライン目標値達成率:表
【まとめ】
患者背景は、透析歴が長く、低栄養の患者は少なくBMI24以上の患者が4割以上認めた。治療薬はカルシミメティクスの使用率が高くリン吸着剤平均錠数は少なく管理できていた。Ca P i-PTHガイドライン達成率、及びCa/Pガイドライン目標値達成率は、良好に管理できていた。
※参照 <本院との比較>