第105回 元気で長生き講座【2021年3月号】
~災害対策としても日頃より良好な栄養状態の維持や血圧管理が望まれます~
先月13日の東北地方にて最大震度6強の地震で、世田谷区も震度4の揺れがあり、マグニチュード(M)7.1で、2011年4月7日のM7.2の余震に匹敵する大きさの地震で、日本透析医会災害時情報ネットワークに本院も情報登録を行いました。第54回元気で長生き講座(2016年5月号 )記載の~災害に備え是非覚えておいて欲しいこと3つ~は1.DW(ドライウエイト:透析後目標体重・基準体重・乾燥体重・基礎体重) 2.グラフト(人工血管)ループの血流の方向 3.アレルギー・禁忌薬 です。災害時は他院にて支援透析を受けなければならない場合も想定されますので、上記3つは必ず覚えて起きましょう。東北公済病院 泌尿器科の阿南 剛先生らは「東日本大震災による血液透析患者への影響の検討」と題した下記抄録内容の論文を発表(腎と透析77巻1号 P113-116,2014)されております。
※SBP:収縮期血圧 TP:総蛋白 Alb:アルブミン Hb:ヘモグロビン ESA:赤血球造血刺激因子製剤
「東日本大震災による外来血液透析患者への影響について検討した。本院の外来透析患者のうち、震災3ヵ月前から震災12ヵ月後までの経過観察が可能であった50例を解析した。その結果、体重は透析前後とも震災後有意に減少したが、9ヵ月以降は震災前と有意差がなくなった。透析前のSBPは震災後有意に上昇し、12ヵ月経過しても高値が持続した。また、TP、Alb、Hb値は震災後有意な低下を認めた。TP、Alb値に関しては12ヵ月後にはほぼ前値に回復し、Hb値に関してはESA増量にて対応可能であった。」
体重はBMI(体格指数:Body Math Index:=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))25前後の軽度肥満の方が最も長生き、Alb高値の方や、貧血が無いもしくは軽度でESA使用量の少ない透析患者様の生命予後良好が報告されておりますので、災害対策としても日頃より十分な蛋白質や鉄分等が多い食事摂取による栄養状態の維持が重要と考えられます。阿南先生は論文内で、カリウム(K)やリン(P)値に変化はなかったことを報告されており、高血圧に対し「ドライウェイトの再設定、降圧薬の増量などの対応が必要であったと考えられる」と記述されておいでです。災害対策としても日頃より塩分と水分の摂取は少なめにして頂き、毎日の体重や家庭血圧測定にて、災害時であってもご自分の身はご自身で守れるよう日頃の自己管理をお願い出来れば幸いです。現在は災害にも強くなっております携帯電話であるスマートフォンをお持ちの方は、体重・血圧管理を容易にする万歩計にも連動するアプリ「Welbyマイカルテ」もご利用ください。「マイカルテ」は「かんたん」に「らく」に記録ができ、クラウドに情報が保管されているので、血圧手帳もいらなくなる便利な無料アプリです。「透析患者様用災害時対応マニュアル」は本院サイト上にも公開しておりますので、適宜ご参照下さい。災害時は積極的な本院へのご連絡やお互いの安否確認を含む情報伝達も重要ですので、メールアドレス等の連絡先が変更となった方は必ずお申し出下さい。