第95回 元気で長生き講座【2020年4月号】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する報告のご紹介 ~感染拡大があったとしても十分な透析実施が望まれます~
JAMAに7万人ものCOVID-19統計結果が報告( Zunyou Wu, et al. Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China. Summary of a Report of 72314 Cases From the Chinese Center for Disease Control and Prevention JAMA. Published online February 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2648 )され、次の内容の追記がなされています。「これまでの新型コロナウイルスSARSやMERSと比較すると共通点と相違点がある。共通点として動物由来であることが挙げられる。SARSは動物に由来する新型のコロナウイルスで中国広東省の市場から発生した。MERSも同様に動物(コウモリ→ラクダ)に由来してサウジアラビアで発生した新型のコロナウイルスであった。SARS、MERS、COVID-19はいずれも発熱、咳嗽などを主症状とした下気道感染を発症し、高齢者や基礎疾患のある患者で重症となり特異的な治療法は見出されていない現状がある。相違点として、SARSは29ヶ国8096人に感染し774人が死亡(致死率9.6%)。MERSは2494人の感染のうち858人が死亡(致死率34.4%)。COVID-19の致死率は低いが、感染者が多いため死亡数が増大。COVID-19の致死率は母数の問題がある。すなわち、全感染者が診断されていない可能性がある。湖北省での死亡率2.9%であるものの、それ以外の地域では0.4%と乖離が生じている。また、SARSやMERSでは多くの二次感染は病院内で発生した。COVID-19でも院内感染は散発的に発生したものの、全体としては少ない。湖北省以外での20省では1183のクラスターが報告されており、それぞれのクラスターは2~4人と少数。クラスターの64%は家族内クラスターで、SARSやMERSよりは感染伝播が速い。」
国内でも九州で透析患者様におけるCOVID-19感染お一人目が報告されました。早くも文献となり、こちらもインターネット上に公開されており、軽快されておられます。
COVID-19が世界で最初に大流行した武漢における武漢大学人民病院の血液透析センターからCOVID-19発生後の状況について報告されました。本年1月14日から2月17日の約1ヶ月の間に230例の慢性維持血液透析患者の内、37例(16.09%)がCOVID-19に感染。死亡率は3%(7例)で、感染者6例(2.6%)、非感染者1例(0.4%)、死因は心不全(2例)、高カリウム血症(2例)、脳血管障害(1例)、原因不明(1例)で、驚くべきことに肺炎で死亡した患者は皆無で重症肺炎のために集中治療室(ICU)に入院も無し。自宅で死亡5例、病院で死亡2例。原因不明を除き、死因は透析室や移動の間のウイルス感染を恐れて透析回数や透析時間が減ったことに起因と考えられる内容(心不全や高カリウム血症、脳出血)のみでありました。透析不足で、体液貯留による心不全や高カリウム血症のほか、高血圧を認めるため脳出血を呈した可能性が考えられます。COVID-19の血液透析患者は、他のCOVID-19患者よりも炎症性サイトカインの血清レベルが著しく低い結果でした。透析患者は免疫能が低い為サイトカインストームによる肺炎の死亡が無かった、ステロイドの使用は慎重であるべきとサイトカインの測定からは考察されています。透析室スタッフについても33名中4名(12.12%)が罹患し隔離治療が行われ死亡例は無し。
COVID-19全感染者が診断されれば、さらに致死率は低下する為、過度に恐れず、長時間透析をはじめとする「しっかり透析」の重要性が示唆される上記報告もなされており、COVID-19感染拡大があったとしても帰宅時のお部屋の換気や手指消毒等の感染対策と共に、引き続き十分な透析の実施をお勧め致します!
お気づきの患者様もいらっしゃると思いますが、旧甲州街道側本院入り口に下記掲示を先月より行っております。「マスク着用のないお客様は入店をご遠慮いただきますようご理解、ご協力をお願いいたします」と掲示するレストランも都内にございます。引き続きどうか宜しくお願い申し上げます。