第86回 元気で長生き講座【2019年6月号】
~継続は力なり:長時間透析は継続することで長生きにつながることが考えられます!~
長時間透析の様々な有用性が報告されており、本院でもこの講座等で度々お伝えしておりますが、2019年4月19日、医療情報ポータルサイトCareNetにて「長時間透析の有用性は確認できず」と題した、ごく一部を抜粋し付けられたタイトルのみからは誤解を与えかねない、下記記事が掲載されました。この研究では長時間透析に割り付けられたほとんど(95%)の患者で長時間透析の継続が実際にはなされなかったために、長時間透析の有用性が認められなかったことが考えられます。それでも長時間透析に割り付けられた群の死亡リスクは9%(3試験では16%)低い結果でした。有意差はなかったこの結果から長時間透析の有用性を否定することは適切ではないと結んでおり、長時間透析を継続しても生命予後が改善(長生き)しなかったことが示されたわけではありません。
「透析条件・透析量と生命予後-患者背景別の検討-」(鈴木一之他.透析会誌45(2):143~155. 2012)にて、日本の週3回施設血液透析患者17万人もの、透析時間・血流量(Qb)・Kt urea(透析量)と1年および5年死亡リスクの関係を、患者背景別に検討した結果、Alb(アルブミン)3g/dL未満等の栄養状態が不良の患者を除き、透析時間が長い患者、Qbが多い患者、透析量が多い患者で、死亡リスクが有意に低いこと(生命予後良好:長生き)が国内透析関連トップジャーナルにて報告されており、「元気で長生き」実現の為にも、良好な栄養状態を維持し、長時間透析や高血液流量(高血流)透析を含む「しっかり透析」の継続を引き続きお勧めいたします!
(以下は記事内容より抜粋)
透析を回数ではなく、時間そのものを目安に延長した場合、血液透析例の予後はどうなるだろうか―。この問いに答えるべく、Brendan Smyth氏(オーストラリア・シドニー大学)は、ACTIVE Dialysis試験の延長観察データを解析した。しかし観察研究という限界もあり、長時間透析の有用性は確認できなかった。4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)にて報告された。
≧24時間/週透析と≦18時間/週の比較
ACTIVE Dialysis試験は元来、長時間透析によるQOLへの影響を検討したランダム化試験である。血液透析(施設、自宅を問わず)を施行中の200例が、透析時間12~15時間(上限18時間)/週の「標準」透析群と、≧24時間/週の「長時間」透析群にランダム化され、12ヵ月間追跡された。両群とも、1週間当たりの透析回数や毎回の透析時間は、参加者が自由に設定できた。今回報告されたのは、上記の12ヵ月間の追跡終了後、さらに4年間観察した結果である。当初の12ヵ月間の追跡終了時、試験に残っていたのは185例だった。平均年齢は52.1歳。透析導入の理由は、糸球体腎炎が41%で最も多く、次いで糖尿病性腎症の27%、高血圧性腎硬化症の11%が続いた。
観察期間の大半で透析時間に差はなくなり、生命予後にも有意差なし
それら185例をさらに4年間観察したデータを解析したが、介入試験終了後の観察研究となったため、「長時間」群における週当たりの透析時間は維持されず短縮。そのため、観察1年後以降は「標準」透析群との差は消失していた。いずれの群も、週の透析時間中央値は12時間であり、観察終了時に「長時間」群で≧24時間/週の透析を受けていたのは5%のみだった。その結果、5年生存率は両群とも80%。「標準」透析群に対する「長時間」群の死亡ハザード比(HR)は0.91で、有意差は認められなかった。
長時間透析の有用性が否定されたわけではない
Smyth氏はそこで、近年の2試験(「頻回[=長時間]」透析vs.「通常」透析)と今回の結果を併せてメタ解析を行った。すると「長時間」透析では「通常」透析に比べ、死亡HRが0.84となったが、有意差はなかった。しかし試験間のばらつきの指標がきわめて高く、同氏は「このメタ解析をもとに、長時間透析の有用性を否定するのは適切ではない」と注意を促した。