第83回 元気で長生き講座(2019年3月号)
本院も施設会員となっております日本透析医会は自主機能評価指標の項目を選定し、自律的に自らの診療内容や医療の質の評価を公開することを勧めています。本院でも選定された全ての評価指標項目を毎年公表しております(表)。
Ⅲの治療指標は透析治療結果を反映するものであります。本院での腎性貧血管理は生命予後の観点からも静注鉄剤投与量のみならず赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が過剰とならない事も目指しており、2018年12月現在ヘモグロビン(Hb)平均値11.29(中央値11.2)g/dLと以前より上昇しておりますが、本院通院患者様の糖尿病を有する方の割合や平均年齢(歳)が全国平均より高いものの、貯蔵鉄の指標であるフェリチン(ferritin)平均値97.45(中央値69.3、検査実施2018年11~12月データ)ng/mLと比較的低値の良好な数値となっております。日本透析医学会の2015年版慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン(透析会誌49(2):89-158,2016)に従いHb10~12g/dLを目標値としつつも、非糖尿病の方(の場合特に貧血改善が良好な生命予後をもたらすことが報告されています)や、活動性の高い比較的若年の方におかれましてはより良いHb値を目標にしたいと存じます。
又、2018年12月現在iPTH平均値166.15(中央値141.5)pg/dLと以前より上昇しておりますが、PTH値と生命予後との関連が低かった報告(Fukagawa M, et al:Abnormal mineral metabolism and mortality in hemodialysis patients
with secondary hyperparathyroidism: evidence from marginal structural models used to adjust for time-dependent confounding. Am J Kidney Dis 63(6):979-87, 2014)もあり、日本透析医学会の慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン(透析会誌45(4):301-356,2012)に従い、透析患者様の異所性石灰化予防及び生命予後の観点からもリン(P)値、補正カルシウム値(cCa)、副甲状腺ホルモン(PTH)値の順に優先して良好な値を目指しており、cCa平均値は9を超えている全国平均よりも低い8.86(中央値8.8)mg/dL、cCa10 mg/dL以下の割合100%の良好な数値となっております。実際、上記CKD-MBDの診療ガイドラインに「透析患者においては血清Ca濃度がたとえ管理目標値内であってもできるだけ低く保つ方が生命予後を改善する可能性が示唆された」との記載がなされております。なお、血清アルブミン(Alb)値が4g/dL未満のときは下記のPayne(ペイン)の式でcCaを算出します。4g/dL以上のときは補正の必要はありません。透析時間に関しては生命予後の観点からも長
時間透析を推進しており、5時間以上の患者様がついに半数に達しました! 全体の一割未満のspKt/V1.2未満の方は透析導入間もない方や短時間頻回透析実施中の一部の在宅血液透析患者様らで、2018年末の本院平均spKt/V値は1.84です。
cCa (mg/dL)=実測Ca値(mg/dL)+{4.0-血中Alb値(g/dL)}
「元気で長生き」を目標に可能な範囲でより良い治療結果が得られるよう皆様と共に今後も歩んでいきたいと考えておりますのでご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。