第78回 元気で長生き講座(2018年9月号)
~シンガポールでの「PRECISE」に参加して~
7月27~28日、シンガポールにて開催されたアジアパシフィック各国の腎臓及び透析専門医が集まるコヴィディエン社主催「PRECISE」(Pacific Region’s End Stage Renal Disease Council for Innovation, Science and Engagement)に日本代表として菅沼が参加し、「HDF vs HD and survival in patients with ESRD: French registry(REIN) & longitudinal study and iHDF Japanese experience.」の講演を行いました。これまでの報告と同様にREIN studyでも本院でも多くの患者様に対し実施中のオンライン血液透析濾過(HDF)実施者生命予後良好が報告されており、わが国においても前希釈大量液置換オンラインHDF、特に40L以上と海外同様高置換の透析患者様における生命予後良好が報告されており、本院でもオンラインHDFにてより大量液置換の方向としており、1時間あたり20Lの前希釈大量液置換を行っている患者様もいらっしゃいます。
本院にて、間歇補充型HDF(I-HDF)にて栄養状態が改善し、長時間透析にて透析量が有意に増加し貧血が改善したこと、透析歴40年以上の超長期透析歴患者様も3名いらっしゃること、日本における長時間透析研究会 http://longhd.jp/ を紹介しました。
透析歴40年以上は信じられないと驚かれ、透析時間が長いことが本院の好成績をもたらしているのだろうとのコメントを頂きました。質疑応答で、海外では行われていないI-HDFの補液量を聞かれ5時間で1.4Lと少量であることをお伝えしました。バスキュラーアクセスの一つである動脈表在化は海外では実施されていないとの事で、低心機能患者様に行われていることをお伝えしました。本院にて高血液流量透析実施中、心機能が改善し内シャントを作成した動脈表在化の患者様がいらして、第45回東京透析研究会にて報告 http://www.tokyo-hd.org/pdf/45th/45th_06_23.pdf しております。海外では金属針が主流であり、日本で一般的な血管内にプラスティックカニューラを留置する穿刺針について、穿刺が金属針より難しいことが指摘されましたが、本院では穿刺が難しい方は超音波診断装置(エコー)を用いた穿刺を行っていることをお伝えしました。シンガポールを除く海外では男性より女性透析患者が多いことが紹介されました。女性で全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする自己免疫疾患が多く、海外では腎移植にて女性から男性に腎臓が提供されることが多いと聞き、日本では腎移植が海外より少ないことも、男性透析患者が多い現状の一因である可能性を考えました。
他国の先生方のご講演の中でも、長時間透析にて動脈硬化症や脳出血の危険が高まる高血圧が改善し降圧剤が減量出来たこと、アルブミン値が高く蛋白摂取量の多い透析患者様における生命予後良好(長生き)が紹介されておりましたので、長時間透析並びにアルブミン値が低くならないよう蛋白質を摂取することをお勧めしたいと存じます。
今回3回目となる海外講演の経験から、海外の現状を学ぶことで日本の透析医療の特徴をより知ることが出来、自身も大変勉強になりました。このような機会をご提供して下さったコヴィディエンジャパンの方々ら関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
参加された各国の先生方と会場内で記念撮影。
Swissotel The Stamford(スイスホテル ザ スタンフォード、シンガポール)内会場前。
英語にて講演。
質疑応答もございました。
高層のスイスホテル ザ スタンフォード、シンガポールからマリーナベイサンズも見えました。