第10回長時間透析研究会いよいよ開催間近
開催間近の第10回長時間透析研究会のプログラム・抄録集が届きました。
日時 2014年11月16日(日)9:00~15:25(終了時刻は変更になりました)
場所 ホテルさっぽろ芸文館
大会長 千葉尚市(医療法人社団腎友会岩見沢クリニック院長)
内容:
特別講演「Intensive Hemodialysis の現況について―個人的回想を含めて」
講師/伊丹儀友先生(医療法人母恋東室蘭サテライトクリニック 所長)
ランチョンセミナー「リン代謝と栄養:最近の知見」
講師/宮本賢一先生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究
部分子栄養学分野教授)
シンポジウム「長時間透析と栄養」
一般講演
お問合せ:医療法人社団腎友会岩見沢クリニック内大会事務局
参 加 費:
医 師 ・ 企 業 : 8,000円
コ・ メ デ ィ カ ル : 3,000円
患者さん・ご家族 : 無 料
腎内科クリニック世田谷からは今回なんと2演題!発表がございます。シンポジウム「長時間透析と栄養」(9:55〜11:25 第1会場)にて菅沼が5名のシンポジストの1人として「高血流長時間透析における溶質除去量と栄養」を発表します。さらに「一般演題 (看護師)」(第2会場)にて、小山看護師長が「6時間透析と透析中の減塩自由食によりデータが改善しセルフケア能力が向上した1症例」を発表します。
東京からは遠方ではありますが、患者様・ご家族様もオープン参加の会になっておりますので、奮ってご参加下さい!
腎内科クリニック世田谷ではFacebookファンページ内に千葉大会長の許可を得まして、今回のイベントページを立ち上げております。
多くの皆様と札幌でもお会い出来ますことを楽しみにしております!
投稿しております抄録内容は下記です。
演題名: 高血流長時間透析における溶質除去量と栄養
氏 名: ○菅沼信也(すがぬま しんや、医師)、
阿部達弥、種山嗣高、斉藤祐太、正木一郎
【目的】
長時間透析を高血流で実施することは、β2MG除去量に比してアミノ酸喪失量が過剰となる事が報告(金田 浩, 内田 広康:透析効率に及ぼす各種影響因子 治療時間 -低血液流量・長時間透析での溶質除去量の検討を中心に-.臨床透析26(4):433-439, 2010)されており、筋肉の萎縮や痩せ等の栄養状態悪化が危惧されるため、検討した。
【対象】
本院にて11名の男性患者(DM5名、59±9.2歳、透析歴5.2±4.4年)に対し6時間無酢酸透析における排液検査を実施した。本院にて週3回の無酢酸透析実施中、血流量を下げずに5→6時間の長時間透析に変更した5名の患者(男性4名、DM3名、55±7.3歳、透析歴8.4±7.5年)を対象に栄養状態を検討した。
【方法】
排液検査にてUN、Cr、P、β2MG各クリアスペース(CS)、P、β2MG各除去量、Alb漏出量、Alb1g当りのβ2MG除去量を求めた。5→6時間透析変更前、三ヶ月後のspKt/V、UNクリアスペース率(A/V)、UN、Cr、P除去率、透析前Alb、β2MG値、CRP、透析前後UN、K、P値、BMI、DW、GNRI、%CGR、蛋白濃縮度(PWI)、インピーダンス法による浮腫値(ECW/TBW)、CTRを後ろ向きに調査した。透析方法は、4名は無酢酸前希釈大量液置換On-line HDF(O-HDF)、1名は長時間透析開始に伴い低カルシウム透析に変更し、2ヶ月後にHD→O-HDFに変更していた。
【結果】
11名における膜面積2.24±0.2m2、QB322±64、tQd591±30mL/min(5名はMFX21~25S/U QS203±32mL/minのO-HDF)にてspKt/V2.31±0.43、UN CS35.4±4.2L、Cr CS28.3±3.8L、P CS32.3±7.4L, β2MG CS11.5±1.9L, P除去量1612±337、β2MG除去量308±71mg、Alb1g当りのβ2MG除去量143±96mgと高値であった(Alb漏出量2.8±1.3g)。5→6時間透析変更後spKt/V、A/V、UN、Cr除去率は有意に増加し、透析後UN、ECW/TBWは有意に低下したが、その他の数値に差はなかった。但し、透析後リン値は低下傾向、BMIは増加傾向を認め、DWに有意差はなかったものの、低カルシウム透析に変更した1名を除き増加傾向を認めた。
【考察】
3ヶ月間の観察にて筋肉の萎縮や痩せ等の栄養状態悪化は少なくとも無酢酸O-HDFでは認めず、むしろ3ヶ月で約1kgの体重増加を認め、これまでも長時間透析のデメリットとして指摘(金田 浩:長時間透析のメリットとデメリット.日本透析医会雑誌27(1):14-18, 2012)されている肥満傾向の可能性が高血流無酢酸長時間O-HDFでも否定できないと考えられた。
【結論】
高血流無酢酸長時間O-HDFでは溶質除去量は多いにも関わらず栄養状態悪化の可能性は低いと考えられる。但し、明確な結論を得るにはより多くの症例および観察期間を要する。
演題名: 6時間透析と透析中の減塩自由食によりデータが改善し
セルフケア能力が向上した1症例
氏 名: ○小山千代美(こやま ちよみ、看護師) 菅沼信也
【はじめに】
長時間透析は優れた治療であるという事は今や周知の事実である。しかし透析が肉体的、精神的、そして時間的にも苦痛がない事を望む多くの患者さんにとって長時間透析に対する抵抗がある事も否めない。
【目的】
透析時間の延長と透析中減塩自由食を取り入れる事でデータが改善すると伴に精神的安定をもたらしセルフケア能力の向上に繋がった経緯を検討する。
【症例】
64歳 男性 原疾患二型糖尿病 導入日2010年8月一人暮らしで無職、不摂生な生活を長年続けている。導入13日後本院に転入。転入時3時間週2回透析QB150mL/minだった。
データ悪化に伴い同年10月4時間週3回透析QB180 mL/min、2012年7月on-lineHDFに変更。2013年3月5時間週3回 on-lineHDF QB370 mL/min、2014年3月6時間週3回on-lineHDFQB370mL/minになり4月からは透析中塩分約2g、700~900kcalの減塩自由食を開始した。
【結果】
1、透析効率をあげた事によりデータが改善、透析中の血圧も安定した。患者さんにはその都度データの説明をする事で患者さん自身の励みになった。4時間週3回期間2010年10月~2013年3月、体重増加率平均中一日4.5%、中二日5.6% 2013年3月kt/v1.57,BUN43.5mg/dL,P4.2mg/dL,GA24.4%,%CGR111,GNRI99.7。5時間週3回期間2013年3月~2014年3月、体重増加率平均中一日4.2%、中二日6.7% 2014年2月 kt/v1.86,BUN32.7mg/dL,P3.8mg/dL,GA27.8%,%CGR128,GNRI96.79。6時間週3回期間2014年3月開始。4月お弁当開始後の体重増加率平均中一日3.4%、中二日4.6% 2014年6月kt/v2.1,BUN32.1/dL,P3.2mg/dL,GA25.0%,%CGR130,GNRI98.28。
2、透析中食事をする事で6時間が苦にならなくなった。また、食事時間が規則的になった事で暴飲暴食がなくなり血糖及び体重増加量が安定した。32.4kg/m2あったBMIは現在31.8kg/m2である。
3、通院は送迎車を利用、透析室までの入退室は車いすだったが体調が良くなるに従い入室は独歩可能となった。
4、当初は6時間透析に対し長くて辛いと訴えていたが今では6時間透析にして良かったと言う言葉が聞かれるようになった。
【結論】
今回の症例では長時間透析を含めた透析効率を上げることでデータが改善した。データ改善に伴い体調が良くなりやる気が出る事でADL、QOLの向上に繋がった。透析中の減塩自由食は規則的な食生活を実現しそれが精神的安定をもたらしセルフケア能力の向上に役立ったと考える。