第76回 元気で長生き講座(2018年6月号)
~長時間透析によりドライウェイトは上昇するが透析間体重増加はむしろ減少~
先月5月13日(日)に烏山区民センターにて腎内科クリニック世田谷・患者友の会共催勉強会が行われました。私からはこれまでの複数の報告をご紹介し長時間透析の有用性を含む「認知症予防を目指した透析ライフ」をお話しました。長時間透析が記憶力等の認知機能の改善に有効であるとの報告も紹介させて頂きました。さらに今回は2名の講師の方にご講演頂きました。
石原サンチェス陽一さんに「認知症予防の為に運動!」をお話頂きました。私もご紹介しました認知症予防に有効な二重課題トレーニングについてもお話頂きました。歩きながら物事を思い出したり考えたりする等、同時に二つのことを行うことは、時間の有効活用にもなりますね。
本院開設10周年記念講演として、あずま腎クリニック東昌広先生に、「シャントマッサージ」と「長時間透析」をテーマにお話頂きました。バスキュラーアクセス(VA)におけるシャントマッサージは自己血管内シャントのみならず、動脈表在化や人工血管の患者様においても実施可能とのことで、VAを長持ちさせることは、医療経済上も、良好な透析効率の維持(しっかり透析)の為にも望まれ、保湿クリームを処方致しますので、いずれのVAの方におかれましても、血液の流れの方向に行うシャントマッサージを是非多くの患者様で実施頂けますと幸いに存じます。東先生のクリニックでは、透析患者様17名に2年間の長時間透析を実施した結果、食欲亢進に伴いDW(ドライウエイト:透析後目標体重・基準体重・乾燥体重・基礎体重)は上昇し栄養状態は改善するが、驚くべきことに透析間体重増加はむしろ減少したとのことです。皮膚や呼吸で失われる水分である不感蒸泄(ふかんじょうせつ)や発汗が増したためであろうと考察されておりました。透析間体重増加が減少し、透析時間が長時間であれば、時間あたりの除水量はとても少なくなり透析中の血圧低下(透析低血圧)も起きにくくなります。透析低血圧の少ない患者様で認知症と関連する脳萎縮の進展が少ないことや透析低血圧や時間あたりの除水量が少ない患者様の生命予後良好(長生き)が報告されており、塩分水分制限、歩行を含む運動と透析時間延長を引き続きお勧め致します!