第54回 元気で長生き講座(2016年5月号)
先月の平成28年熊本地震により透析不可能の施設が40施設程認められました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被災の程度によっては復旧に時間がかかり、他院での緊急臨時透析を余儀なくされることも考えられます。本院においても5年前の東日本大震災の際、被災された複数の透析患者様の緊急臨時透析の受け入れを行いました。仙台にて東日本大震災を経験された透析療法指導看護師石田容子さん(元仙台社会保険病院血液透析室)のフェイスブックでの情報によれば、災害時への備えとして、血液透析患者様に知っておいて欲しいことベスト3は左記になります。是非最低限覚えておきましょう!
1.DW(ドライウエイト:透析後目標体重・基準体重・乾燥体重・基礎体重)
是非覚えておいて頂いた方が、日々の御自身の体重管理にも役立つことでしょう。先月の患者会勉強会で小山師長も述べたように、二日空きでDWの6%以下、一日空きでDWの4%以下の透析間体重増加が望ましいと言われています。
2.グラフト(人工血管)ループの血流の方向
動脈側・静脈側を逆に穿刺した場合再循環し透析の効率が低下してしまいますので、バスキュラーアクセスの多くを占める自己血管内シャントではない人工血管をアクセスとしてお持ちの方は、動脈側(脱血側)・静脈側(返血側)それぞれの正しい位置を毎回の穿刺の際に覚えてしまいましょう。
3.アレルギー・禁忌薬
覚えきれない程多い方は一覧を携帯された方が良いですね。
災害時は透析不可能となった施設より臨時透析の患者様が多くいらして、ベッドが混むことも考えられますし、水も不足しますので、生命維持のための最低限の2~3時間の短時間透析とせざるを得ない場合があります。福島県郡山市の援腎会すずきクリニック院長鈴木一裕先生のお話では同院の平均透析時間は現在5時間!ですが、東日本大震災時一時的に3時間透析となってしまった多くの患者様が、痒みや血圧の上昇を訴え、元の透析時間に早めに戻して欲しいと希望されたそうです。長い透析時間の有用性が示唆されるエピソードですね。災害時も可能であれば3~5時間透析を希望してみてください。血流量QBはなるべく高めとしてもらうことをおすすめいたします。
お薬手帳も携帯しておくと良いでしょう。災害時の連絡に一般電話は不通となりやすいため、本院災害時用PHSへの御連絡やEメールを是非ご活用下さい。その他、災害時の心得や災害対策につきましては、配布しております本院オリジナルの「災害対策マニュアル」を是非ご参照下さい。ご不明な点は何なりとスタッフにご質問下さい。常日頃は「しっかり食べて動いてしっかり透析」により、万一の災害も乗り越えられる十分な体力をつけておきましょう!