第43回 元気で長生き講座(2015年6月号)
~本院での治療結果についてのご報告~
本院も施設会員となっております日本透析医会は自主機能評価指標の項目を選定し、自律的に自らの診療内容や医療の質の評価を公開することを勧めています。本院でも選定された全ての評価指標項目を公表しております。
2014年末のデータは「自主機能評価指標公開」をご覧下さい。
Ⅲの治療指標は透析治療結果を反映するものです。本院での腎性貧血管理は生命予後の観点からも赤血球造血刺激因子製剤(ESA)のみならず鉄剤投与量が過剰とならない事も目指しており、2014年12月現在ヘモグロビン(Hb)平均値10.73(中央値10.75)g/dLと以前(昨年)より良好かつ本院通院患者様の糖尿病を有する方の割合や平均年齢(歳)が全国平均より高いにも関わらず、貯蔵鉄の指標であるフェリチン(ferritin)平均値61(中央値52.9、検査実施11月にて2014年11月データ)ng/mLと比較的低値の良好な数値となっております。日本透析医学会の2008年版慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン(透析会誌41(10):661-716,2008)に従いHb10~11g/dLを目標値としつつも、非糖尿病の方(の場合特に貧血改善が良好な生命予後をもたらすことが報告されています)や、活動性の高い比較的若年の方におかれましてはHb11~12g/dLを目標とする事も考慮したいと存じます。
昨年に比べ、副甲状腺ホルモン(PTH)値が上昇しておりますが、PTH低値程血管石灰化を認めるとの報告(London GM,et al:Arterial calcifications and bone histomorphometry in end-stage renal disease. J Am Soc Nephrol15(7):1943-51, 2004 )に加え、PTH値と生命予後の関連性の低さも報告(Fukagawa M, et al:Abnormal mineral metabolism and mortality in hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism: evidence from marginal structural models used to adjust for time-dependent confounding. Am J Kidney Dis 63(6):979-87, 2014 )されており、日本透析医学会の慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン(透析会誌45(4):301-356,2012)に従い、透析患者様の異所性石灰化予防及び生命予後の観点からもリン(P)値、補正カルシウム値(cCa)、PTH値の順に優先して良好な値を目指しており、cCa平均値は9を超えている全国平均よりも低い8.75(中央値8.8)mg/dL、cCa10mg/dL以下の割合98.6%の良好な数値となっております。実際、上記CKD-MBDの診療ガイドラインに「透析患者においては血清Ca濃度がたとえ管理目標値内であってもできるだけ低く保つ方が生命予後を改善する可能性が示唆された」との記載がなされております!
なお、血清アルブミン(Alb)値が4g/dL未満のときは左記のPayne(ぺいん)の式でcCaを算出します。4g/dL以上のときは補正の必要はありません。cCa (mg/dL)=実測Ca値(mg/dL)+{4-血中Alb値g/dL)}又、2014年末の本院平均spKt/V値は1.87であり、透析アミロイドーシスの原因蛋白β2MG血中濃度が低い方程生命予後良好が示された2009年末における「わが国の慢性透析療法の現況」によれば、透析量の指標であるspKt/V1.8~2の患者様が最も生命予後良好が報告されております。
「元気で長生き」を目標に可能な範囲でより良い治療結果が得られるよう皆様と共に今後も歩んでいきたいと考えておりますのでご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。