第40回 元気で長生き講座(2015年3月号)
〜「透析れんらく帳」を日々の自己管理に活かして頂く事をお勧めします〜
今回、東京山手メディカルセンター(旧社会保険中央総合病院)腎臓内科吉本宏先生監修の「透析れんらく帳」~ご家庭と病院とのかけ橋に~を配布させて頂きます。72頁もございますが、大変充実した内容となっており、是非ご一読頂き、日々の自己管理に活かして頂ければ幸いです。「透析れんらく帳」の記載内容で気づいた点を書かせて頂きます。
3、8頁、従来の某透析手帳に透析前後の血圧を記載する欄がありましたが、透析前後の血圧は本院にて記録がなされておりますので、記載頂く必要は一切ございません。一方、透析時や日中の血圧が良好であっても、起床時の高血圧、いわゆる早朝高血圧や透析より帰宅後に低血圧を認める方もいらっしゃいますので、ご自宅での血圧(家庭血圧)を是非記録頂ければと思います。結果に応じてドライウエイト(DryWeight:DW、基準体重、透析後目標体重、基礎体重)や降圧剤の調整を検討させて頂きたく存じます。血圧のみならず心拍数(脈拍数)と生命予後との関連も報告されており、自動血圧計には血圧と共に表示されますので、脈拍数の記録もお願い致します。
7、8頁、シャントは突然閉塞する事もあります。異常の早期発見により大事に至らずに治療出来る事もございますので、シャントは非透析日を含め流れているか毎朝確認をお願い致します。
57頁、筋肉量と相関するクレアチニン(Cr)値は高い方で長生きが報告されていますので、高値を気にする必要はありません。一方、尿素窒素(UN)をCr値で割ったUN/Cr比は低い方が長生きと報告されておりますので、UNは低値を目標にしましょう。アルブミン(Alb)値や透析でのUN除去率が高い方が長生きとの報告がありますので、UNを低下させるには蛋白質制限ではなく、透析量増加をお勧めします。カリウム(K)値は高めの方が長生きと報告されており、4.5~5.5(出来れば5~5.5)mEq/Lを目標にされて下さい。
58頁、残存腎機能が喪失されている事が多い透析歴二年以上の方では、透析間の体重増加量は二日空きでDWに対する体重増加率4~6%で最も長生きとの報告がありますので、二日空きの週初めは6%以内を目標にされて下さい。体重増加率は毎回本院の透析支援システムで自動計算されております。透析間体重増加が多い方は非透析日にも是非体重を測定頂き、心臓や血管に負担がかかりますので、増え過ぎないよう塩分と水分の摂取は控えめにして頂ければ幸いです。血清フェリチン値は鉄欠乏と診断される100未満で生命予後良好の報告がある事から、日本透析医学会(JSDT)の次に発表される新しい「腎性貧血治療のガイドライン」では鉄剤投与の際に300ng/mLを超えないようにするとの上限設定がなされる予定と聞いております。
59頁、生命予後及び異所性石灰化予防の観点から、リン(P)、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)の順に優先して低めの数値にコントロールをお勧めします。「しっかり食べて動いてしっかり透析」と日々の自己管理で合併症を予防し、元気で長生きしましょう!