第32回 元気で長生き講座(2014年7月号)
〜高血液流量透析における好成績〜
先月神戸にて第59回日本透析医学会学術集会・総会が開催され、これまでも紹介しておりました透析歴45年目の方もいらっしゃる名古屋の城北クリニック(院長中村中先生)の臨床工学技士目叶裕史さんが演題名「患者のための高血液流量透析」を発表されました。今回はその抄録内容をご紹介します。
【目的】
生命予後の改善、QOLの向上のため様々な治療条件が検討されている。本院は設定血液流量を350mL/min以上とし、治療効率上昇を図り、食事など制限を行わない自由な生活を促している。高血液流量透析の生命予後およびQOLへの影響を検討する。
【方法】
除去率を測定する。Kt/V、透析歴、粗死亡率を全国平均と比較し、HRQOL(健康関連QOL=Health ーrelated QOL )をSF-36(HRQOLを測定するための科学的で信頼性・妥当性を持つ尺度)で評価する。
【結果】
除去率はβ2MG82.4±4.7%、α1MG32.4±8.8%であった。Kt/Vは男2.1±0.3、女2.7±0.4と全国より高かった。透析歴は12.1±10.9年で全国8.8±6.8年より長く、透析歴20年以上の割合は22.5%と全国7.8%より高かった。粗死亡率(10年間)は4.7±2.7%と全国9.6±0.3%に比し有意に低かった。SF-36は他のデータに比し高い傾向にあった。
【考察】
設定血液流量を平均390mL/minと高くし、透析量を増大させることで、高効率でも血清Alb濃度3.8g/mLと低栄養状態を避ける食事などを制限しない生活が可能となり粗死亡率の低下、透析歴の延長、QOL向上につながったと考えられる。
【結語】
高血液流量透析は生命予後の改善、QOLの向上の一端を担う。QOLは「生活の質」の事を言い、β2MGは透析アミロイドーシスの原因蛋白です。全国平均は日本透析医学会(JSDT)の年末調査によるもので、本院を含む全国の過半数の施設が毎年協力しています。城北クリニックさんは平均透析時間も4.5~4.6時間と長いため、高血流のみならず透析時間もその好成績に寄与していることが考えられます。
高い方が生命予後良好(長生き)である事が知られているAlb(アルブミン)値や透析量の指標であるKt/Vも良好な数値で、「しっかり食べてしっかり透析」が好成績をもたらしている事が考えられます!