第73回 元気で長生き講座(2018年3月号)
~透析治療 時間を延ばす大切さ~
先月2月12日の福島民報新聞「日常のカルテ」に福島県医師会員で郡山市の援腎会理事長・すずきクリニック院長の鈴木一裕先生の「透析治療 時間を延ばす大切さ」と題した投稿が掲載されました。鈴木先生のご許可を得て全文紹介させて頂きます。院長菅沼が世田谷区医師会員である本院施設透析患者様における平均透析時間は伸びてはいるものの現在「すずきクリニック」に及ばない4時間40分となっており、本院も透析時間を延ばすご希望に応じられる体制を目指し、より多くの患者様におかれまして治療効果が高まる透析時間延長により「元気で長生き」されますことを期待しております!
先日、知人から透析は4時間もかかって大変だってねと言われました。
私たちの施設では皆さん5時間、透析を受けていますよと言ったところ大変驚いていました。全国的には週3回4時間の透析を行っている施設が多いのですが、長時間透析研究会と言う6時間以上の透析を勧めている研究会もあります。
腎不全の方に透析治療が行われるようになって50年以上経過し、透析治療は目覚ましい進歩を遂げてきました。最初は治療時間が8時間くらいかかったのですが、徐々に進歩して透析時間は4時間くらいになってきました。しかし、4時間程度の透析時間では毒素が十分に抜けないことも分かってきました。毒素は身体の隅々まで回っていますので、短時間だと血管の中だけしか取り除けないのです。だから、じっくり時間をかけて、身体の隅々から血管の中にわき出てくる毒素を抜いてあげることが大切なんです。
精神科医で40年以上透析を受けられた故春木繁一先生は、自ら6時間半の透析を受けられていましたが「5時間半くらいになると、身体が温かくなってくるんだ」と仰(おっしゃ)っていました。身体の隅々まで毒素が抜けるのを身体が実感しているのかもしれません。
でも、実際に透析時間を延ばそうと勧めてもすぐに希望される方は少ないです。われわれは、透析時間を長くすると合併症が減り高血圧が良くなり、長生きできることや、時間をかけてゆっくり除水することが透析中の苦痛を減らすことを粘り強く説明しているのです。今では時間を延ばす意味を理解し体感した方が多くなりました。6時間にしてくれとか、週4回やってくれなんて言う方も出てきました。そして、どんどん透析時間を延ばす方が良いと言う考えがクリニックに浸透しているようになりました。
他の施設の方から、「時間を延ばす良さは知っていますが希望する方がいないです。どうしたら透析時間を延ばせるようになりますか」とよく聞かれます。「透析時間はその透析室の文化です。見て聴いてやってみて実感してその良さが分かります。本院も平均透析時間が5時間を越えるのに9年かかりました。繰り返し時間をかけてその効果を伝えていくことが大切なのです」と答えています。
透析時間を延ばし、血液流量を上げて透析量を増やす透析を行えば、合併症も減ってきます。血圧も下がり、内服する薬の量も減ってきます。最初は嫌だと思っていても、続けていくと以前と全く違う体調の良さを感じることができます。身近な方で透析を受けている方がいらっしゃいましたら時間を延ばすことの大切さを知らせてあげてください。