人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

菅沼院長の元気で長生き講座
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第71回 元気で長生き講座(2017年12月号)

菅沼院長の元気で長生き講座

~貧血予防や長生きのためにも鉄の適切な補充を行いましょう~

 

鉄は生体にとって重要な金属ですが、過剰になると有害です。このため、定期的な採血にてTSAT(トランスフェリン飽和度)やフェリチンの値を見て、欠乏になっていないか、反対に過剰になっていないかを確認しています。TSATは体内で利用される鉄、フェリチンは体内に貯蔵されている鉄の量を反映するとされています。

 

鉄欠乏と脳梗塞が有意に関連するとの報告や、鉄状態と生命予後について、TSAT20%未満で不良、TSAT20%以上かつ血清フェリチン値3080ng/mL未満で有意に良好との報告があります。TSAT20%未満や血清フェリチン値30未満の鉄欠乏状態は生命予後の観点からも避けることが望まれます。日本透析医学会腎性貧血治療のガイドラインではこれまで、TSAT20%未満かつ血清フェリチン値100未満にて鉄剤投与が推奨されていましたが、 昨年発行の2015年版慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン(透析会誌 2016; 49(2): 89-158)にてTSAT20%未満または血清フェリチン値100未満にて鉄剤投与が考慮されるよう改訂されました。鉄剤投与により造血ホルモン(ESA)製剤投与量が減量可能となり、貧血改善と相俟って良好な生命予後が期待出来ます。

 

逆に鉄過剰状態も動脈硬化進展、感染症、酸化ストレス亢進、ウィルス性肝炎悪化等のリスクが懸念され、血清フェリチン値300ng/mL未満を維持することが推奨されます。本院でも行っております維持的な鉄の静注投与に比べ、静注鉄剤の毎回投与や1度に大量投与すると感染症関連の入院が増えるとの報告もあり注意が必要で、本院でも週1回を超える静注鉄剤投与は極力避けるようにしております。経口が可能な患者様の場合は、静注よりも鉄分の多い食事の摂取や経口投与の方が望まれ、現在経口薬の貧血の改善に有効な鉄の補充と異所性石灰化の原因となる高リン血症改善の双方が可能となる鉄含有リン吸着薬もありますので、ご相談下さい。

TSATは下記の計算方法によって算出されます。採血結果内にFe(鉄)とTIBC(総鉄結合能)の値がありますので、ぜひ計算をしてみてください。

 

TSAT(%)=FeTIBC×100

 

また、含糖酸化静注鉄剤であるフェジンは5%の薄いブドウ糖溶液に溶かして透析時にゆっくり投与しております。これにより副作用の軽減が期待できます。また、注射剤をアンプルから吸い上げる際に破砕したガラス片が薬剤内に混入することがありますが、原液の粘度の高いフェジンの場合ガラス片が浮遊し、体内に混入する恐れがあるため、ブドウ糖溶液で薄めることにより沈殿させることができます。本院の勉強会でもお話いただいた医療法人社団日高会腎臓病治療センター永野伸郎先生によると、注射する前に準備されたシリンジの置く向きに注意が必要とのことです(画像参照)。このように正しくシリンジを置くことで少なくとも大きなガラス片の患者様の体内への混入が予防出来るものと期待されます。