第70回 元気で長生き講座(2017年10月号)
本院へ臨時透析にいらしたこともある「しっかり透析のヒケツ」の著者としても有名な仙台の「かわせみクリニック」院長鈴木一之先生が日本透析医会誌にて頻回透析・長時間透析の10の利点をエビデンスに基づき記載されておられますので、今回ご紹介致します。エビデンスとは根拠のことで、これまでの報告により蓄積されます。症例報告よりもより多い患者様の検討結果での報告がエビデンスレベルの高い報告とされており、経験のみでなくエビデンスに基づいた医療の実践が推奨されています。
1.β2-マイクログロブリン(β2MG)は長期透析歴の患者様の合併症である透析アミロイドーシスの原因とされており、β2MGの数値が低い透析患者様程長生きされておられます。本院でも3ヶ月に1回はその数値を測定しております。
2.リン(P)も生命予後と強い関連があります。β2MGは中分子領域の尿毒素であり、Pは小分子ですが水分子に囲まれて存在しており、共に透析時間延長がその除去に効果があることが知られています。
3.高血液流量透析(高血流透析)と同様頻回透析・長時間透析においても小分子のカリウムも低下し、食事制限が緩和されます。
4.食欲低下をもたらす尿毒素除去により食欲増進につながると言われています。
5.本院のクエン酸含有無酢酸透析液を用いた長時間透析により貧血改善及びエリスロポエチン等の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)減量の傾向を認めました。貧血の無い方やESA投与量の少ない方が長生きされていることが知られています。
6.むくみ(浮腫)が改善し、透析患者様の死因として多いうっ血性心不全が生じにくくなります。
7.体液量が適正になると高血圧が改善します。
8.時間あたりの除水量が減るため透析中の血圧低下や下肢つりが少なくなります。透析中に血圧が低下する透析低血圧を認めない患者様の方が長生きされていることが知られています。
9.体液量が適正になると心臓への負担が減ります。心肥大の程度は本院でも行っております心臓超音波検査にて左室心筋重量係数(LVMI)の数値でも分かります。本院オーバーナイト透析開始後LVMIの数値が改善した方もいらっしゃいます。
10.頻回透析・長時間透析の方は長生きされていることが報告されています。
以上の様に頻回透析・長時間透析には大変多くの利点を有し最高水準の透析療法であり、透析回数の増加や透析時間の延長を希望される方は菅沼もしくは本院スタッフに是非お申し出下さい!
先月もご案内しましたように来月いよいよ頻回透析・長時間透析が実現出来る在宅血液透析の研究会(在宅血液透析研究会)及び長時間透析研究会が共に本年は横浜及び東京にて開催されます。患者様とそのご家族も参加可能な会となっておりますので、是非ご参加下さい。