第61回 元気で長生き講座(2016年12月号)
~本院での良好な透析治療結果のご報告~
本院も施設会員となっております日本透析医会は自主機能評価指標の項目を選定し、自律的に自らの診療内容や医療の質の評価を公開することを勧めています。本院でも選定された全ての評価指標項目について各年末の結果を公表しております。
Ⅲの治療指標は透析治療結果を反映するものであります。本院での腎性貧血管理は生命予後の観点からも赤血球造血刺激因子製剤(ESA)及び鉄剤投与量が過剰とならない事も目指しておりますが、2015年12月現在ヘモグロビン(Hb)平均値10.93(中央値11.00)g/dLと以前より上昇しております。又、2015年12月現在副甲状腺ホルモン(i-PTH)平均値199.1(中央値173.0)pg/dLとやや高値でありますが、血管石灰化が高度であるほどPTH値は低いとの報告(London GM,et al: J Am Soc Nephrol 15(7):1943-51, 2004)、i-PTH60 pg/dL未満で有意に大動脈の石灰化が進展し生命予後も不良であったとの報告(Rhee Harin, et al: Clinical and Experimental Nephrology 16(3) :433-441, 2012)やリン(P)値やカルシウム (Ca) 値と異なりPTH値と生命予後との関連が低かった報告(Fukagawa M, et al: Am J Kidney Dis 63(6):979-87, 2014)もあり、日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン」(透析会誌45(4):301-356,2012)に従い、透析患者様の異所性石灰化予防及び生命予後の観点からもP値、補正Ca値(cCa)、i-PTH値の順に優先して良好な値を目指しており、cCa平均値は9を超えている全国平均よりも低い8.75(中央値8.75)mg/dL、cCa10 mg/dL以下の割合100%の良好な数値となっております。実際、上記CKD-MBDの診療ガイドラインに「透析患者においては血清Ca濃度がたとえ管理目標値内であってもできるだけ低く保つ方が生命予後を改善する可能性が示唆された」との記載がなされております。なお、血清アルブミン(Alb)値が4g/dL未満のときは下記のPayne(ペイン)の式でcCaを算出します。4g/dL以上のときは補正の必要はありません。又、透析量を示す指標であるspKt/V1.2未満のごく一部の方は透析導入間もない方らで、2015年末の本院平均spKt/V値は1.95と2014年末よりさらに上昇しておりました。2009年末の「わが国の慢性透析療法の現況」にて、spKt/V1.8~2の方が最も生命予後良好で、次いでspKt/V2以上の方が生命予後良好の結果が報告されており、長生きの為にもやはり十分な透析量の確保が重要です。
本年(2016年末)の治療結果につきましても、来年(2017年)報告させて頂きます。
cCa (mg/dL)=実測Ca値(mg/dL)+{4.0-血中Alb値(g/dL)}
「元気で長生き」を目標に可能な範囲でより良い治療結果が得られるよう皆様と共に今後も歩んでいきたいと考えておりますのでご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。
Ⅲ.治療指標(外来HD患者対象) | |
①腎性貧血管理(Hb 10.0g/dL 以上の比率) | 83.5% (平均 : 10.9g/dL) |
②P管理(P 6.0 mg/dL 以下の比率) | 88.5% (平均 : 4.58mg/dL) |
*補正Ca管理(cCa10.0mg/dL下の比率) | 100.0% (平均 : 8.75mg/dL) |
③PTH 管理(iPTH 240pg/dL 以下 または WholePTH 150pg/dL以下の比率) | 69.8% |
④透析時間(4時間以上の患者の比率) | 100.0% |
⑤透析時間(5時間以上の患者の比率) | 27.3% |
⑥透析量(sp Kt/V 1.2 以上の比率) | 99.3% (平均 : 1.95) |
*β2MG管理(β2MG 30mg/L 以下の比率) | 74.1% (平均 : 26.8mg/L) |