人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
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菅沼院長の元気で長生き講座
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第148回 元気で長生き講座【2025年2月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~引き続き各種ワクチンや手洗いを含む感染予防対策継続をお勧めします~

 

幸い減少したものの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は依然認められており、今冬はインフルエンザの大きな流行がございました。内科学専門誌 JAMA Internal Medicineに掲載された、非重症インフルエンザウイルス感染症の治療にて、最適な抗ウイルス薬は何か?と題された最新論文1を紹介します。

 

合計34,332人を対象とした73件の試験のメタ解析がなされました。標準治療またはプラセボと比較して、すべての抗ウイルス薬は低リスク患者および高リスク患者の死亡率にほとんど、またはまったく影響を与えませんでした(高い確実性)。すべての抗ウイルス薬(注射剤のペラミビルとアマンタジンのデータはありませんでした)は、低リスク患者の入院率にほとんど、またはまったく影響を与えませんでした(高い確実性)。

高リスク患者の入院率については、オセルタミビルはほとんど、またはまったく影響を与えず(高い確実性)、バロキサビルは入院リスクを減少させた可能性がありました(低い確実性)。その他の薬剤は、ほとんど効果がない可能性がありました。

症状軽減までの時間については、バロキサビルは症状の持続期間を短縮する可能性が高く(中程度の確実性)、オセルタミビルは大きな影響をほとんど与えなかった可能性がありました(中程度の確実性)。

治療に関連する副作用については、バロキサビルは副作用がほとんど、またはまったくありませんでした(高い確実性)。

結果として、バロキサビルは高リスク患者の入院リスクを減少させる可能性が高く、非重症インフルエンザ患者にて副作用を増やすことなく症状軽減までの時間を短縮する可能性があることが示唆されました。他のすべての抗ウイルス薬は、患者にとって重要なアウトカムに対してほとんど、またはまったく影響を与えないか、その効果が不確実である可能性があります。

 

以上より、非重症インフルエンザ患者に対しては、抗インフルエンザ薬は、実際はほとんど効かない、バロキサビルが若干良さそうとの結果で抗インフルエンザ薬も残念ながら特効薬ではないことが明らかになりました。従ってやはり、ワクチン接種、後述の感染予防策が大事です。

但し、腎排泄型の薬剤であるオセルタミビル(タミフル)は透析患者様の場合は血中濃度が上昇し1カプセル内服で済むことも多く、早期治療開始が効果発揮や重症化予防に寄与することも考えられ、引き続き本院では活用して参りたいと存じます2

 

 

また、肺炎球菌ワクチン(PV)単独またはインフルエンザワクチン(IV)との併用によって、全死亡率、肺炎、心血管イベントや安全性に及ぼす影響を評価した研究3も紹介します。

 

合計394,299人の透析患者を対象としメタ解析がなされました。ワクチン未接種者と比較して、PV接種者は全死亡率および心血管イベントが低く、重大な有害事象の報告はありませんでした。ワクチン非接種者と比較して、全死亡率が、PV単独群で14%、IV単独群で24%、PVIV両者併用群で29%も低かった一方で、肺炎発症率においては、PV接種群と非接種群の間に有意な差は認められませんでした。残存交絡因子や「健康なワクチン接種者バイアス」の影響を受けている可能性があるものの、PVの接種、特にIVとの併用は、全死亡率の低下と関連していました。

従って、両ワクチン接種を引き続き本院もお勧め致します。

 

糖尿病や末期腎不全の影響で透析患者様は易感染性が存在し感染症罹患の可能性が高い為、ワクチン接種と共に以下の実施を引き続きお勧め致します。

 

1.健康状態把握のため毎日体温を測定し、発熱時等他の患者への感染がご心配な時は必ずご来院前に本院まで連絡する

2.インフルエンザ、ノロウイルスやCOVID-19感染が考えられる場合には本院北側の裏口から他の患者と接触しない時間に来院する(完全個室透析室での透析やカーテン隔離での透析となります)

3.会話時等の場面でマスク着用を心がける

4.帰宅時やご来院時(石ケン不要で手荒れが起きにくい玄関及び第二透析室にございますオゾン手洗い装置ハンドレックスもご活用ください*)、気道分泌物で手が汚れた時、食事前やお薬服用前には手洗いや手指衛生を必ず行う

5.シャントを介した感染症予防の為、透析日透析前にシャント肢の手洗い(*)を行う

6.適宜換気や加湿、特にせき等の呼吸器症状のある方とは2m以上の距離を取り、三密(密閉・密集・密接)を回避しましょう。

7.インフルエンザやCOVID-19流行時は本院での取り組みである5℃以上の熱を認めた場合は、1224時間以内、特にせき等の呼吸器症状を認めた際には直ちに事前にお渡ししておりますタミフル1C内服2し、本院までご連絡ください。

 

以上を実施頂き、院内感染予防の為にも、ご協力をお願いいたします。

 

参考URL/文献

1)Y Gao, Y Zhao, M Liu, et al. Influenza: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. JAMA Intern Med. Published online January 13, 2025. doi:10.1001/jamainternmed.2024.7193

2)第134回 元気で長生き講座【2023年10月号】 

3)Y Mo, J Zeng, C Xiao, et al. Effectiveness and safety of pneumococcal vaccines used alone or combined with influenza vaccination in dialysis patients: A systematic review and meta-analysis. Vaccine 2020 Nov 3;38(47):7422-7432. doi: 10.1016/j.vaccine.2020.09.080. Epub 2020 Oct 12.