第120回 元気で長生き講座【2022年7月号】
~在宅透析は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患率や入院率、ワクチン接種は罹患時の生命予後良好が期待出来ます~
在宅透析のメリットは、決められた時間に通う施設透析と異なり、時間の確保がしやすいため、二日空きをなくした十分な透析が可能となる、透析中の血圧低下や、尿毒症症状(かゆみ、全身の倦怠感、むくみなど)の改善が見込まれ、良好な体調を維持し、長生きが期待できる、食事制限が緩和される、そして、高血圧、高リン血症や貧血の改善に伴い薬を飲む量も減少するなどです。また、通院が大幅に減少するため通院に伴う時間的・金銭的負担が減ります。透析スケジュールをご自身のライフスタイルに合わせて自由に設定することが可能なため、家族や友人と過ごす時間や仕事をする時間が確保できる点も大きいです。そして、通院回数が減ることにより感染のリスクも低くなることも指摘されています。
下図は、「透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数(2022年6月9日16時時点)」に記された統計です。第115回 元気で長生き講座【2022年2月号】にてご紹介した時と同様血液透析(HD)患者様に対し在宅透析である腹膜透析(PD)患者様の方がCOVID-19罹患率は有意に低い結果が示されています。
(日本透析医学会ウェブサイト 透析患者における累計の新型コロナウイルス感染者の登録数(2022年6月10日付け)より抜粋し検定実施)
さらに、カナダからの報告(下図)1)では、2020年3月~11月の観察期間にて在宅血液透析(HHD)769名を含む在宅透析患者3622名は施設HD患者9890名と比べ新型コロナウイルス陽性率と入院率が有意に低い結果でした。PDのみならずHHDでも、新型コロナウイルスへの曝露機会が施設HD患者様よりも少なかったことが、COVID-19感染や入院のリスクを低減させたのではと考えます。
また、ワクチン接種に関してもあらたな報告があります。新型コロナウイルス感染対策合同委員会委員長の菊地先生らによる本年の報告(下図)2)によると、透析患者様がワクチンを接種しても感染する方は一定数いますが 生命予後が未接種の方と比較して明らかに良いことが分かりました。未接種の死亡率が24.2%と高かったのに対し、ワクチンを接種した後に感染した場合の死亡率は、約3分の1のわずか8.6%と有意に低い結果となっています。ワクチン接種の効果が高く生存に有効であることが分かります。
日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会 新型コロナウイルス感染対策合同委員会が報告している新型コロナウイルス感染症罹患透析患者様における調査結果でも死亡者の多く(7割以上)をワクチン未接種の方が占めており、ワクチン接種を引き続き強くお勧め致します。
(日本透析医学会ウェブサイト 透析患者における累計の新型コロナウイルス感染者の登録数(2022年6月10日付け)より抜粋)
既に4回目のワクチン接種が始まっています。4回目は、3回目接種を受けてから5か月以上経過している方で、かつ①60歳以上の方、②基礎疾患のある18歳以上60歳未満の方が対象です。このうち、①60歳以上の方は、今まで通りお住いの市区町村より接種券が郵送されますが、②基礎疾患のある18歳以上60歳未満の方の場合は注意が必要です。基礎疾患の中でも透析患者様を含む慢性腎臓病(CKD)患者様において特に新型コロナウイルス感染症による死亡率が高く、中でも透析患者様の死亡リスクは3倍以上と報告3)されており、万一の罹患時でも生存率を高めるワクチン接種を重ねてお勧めします!
「愛の手帳」を所持している場合、または1、2回目接種時に基礎疾患がある方として接種券を優先的に受け取るための申請を行った方は接種券の申請は不要ですが、それ以外の方は接種券発行の申請が必要です。オンラインまたは郵送で申請が可能です。詳細はお住いの市区町村ウェブサイトをご参照ください。なお、申請が受理されてからお手元に届くまで1~2週間程度かかります。
参考文献
1)Perl J, Thomas D, Tang Y, et al. COVID-19 among Adults Receiving Home versus In-Center Dialysis. Clin J Am Soc Nephrol. 2021;16(9):1410-2.
2)Kikuchi K, Nangaku M, Ryuzaki M, et al. Effectiveness of SARS-CoV-2vaccines on hemodialysis patients in Japan: A nationwide cohort study. Ther Apher Dial. 2022. https://doi.org/10.1111/1744-9987.13887
3)Nature. 2020 Aug;584(7821):430-436. doi: 10.1038/s41586-020-2521-4. Epub 2020 Jul 8.