第106回 元気で長生き講座【2021年4月号】
~新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策となるワクチン接種~
新型コロナウイルスワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症を予防し、死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、結果としてCOVID-19のまん延の防止を図ることを目的としています。接種は令和3年2月17日から開始され、令和4年2月末までの予定です。現在医療従事者等への接種が優先的に行われており、その後高齢者、基礎疾患を有する方等の順に接種が行われる見込みです。高齢者への接種は、一部の区市町村で4月12日の週から開始される予定です。当初は実施する区市町村や接種する人数が限られており、順次拡大されていきます。世田谷区は区内19ヶ所での集団接種から開始予定となっております。また、現時点での世田谷区の新型コロナワクチン接種に関する方向性・集団接種場所等はWebサイトに公開されています。
将来的にはワクチンの安定供給と配送手段の確立により、各医療機関での接種、高齢者施設に訪問しての接種を行う「個別接種(サテライト型)」も可能になっていく見込みとのことです。
接種費用は、全額公費で接種を行うため、無料で接種できます。現在ワクチン接種を口実とした詐欺行為が発生しています。「ATMで接種金額を振り込んでください。」、「予約金が事前に必要です。」といった内容ですが、そのようなことは絶対にありませんので、不審な電話を受けたときは「世田谷区特殊詐欺相談ホットライン(03-5432-2121)」または管轄の警察署に通報してください。
<ワクチンの効用>
研究結果でもワクチンの効果は示されており、感染・重症化予防に十分有効な対策です。ファイザー社のワクチンの効果について、岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野の下畑教授のブログから引用致します。
◆イスラエルでファイザーワクチン2回接種は,感染の9割をリアルワールドでも予防.
イスラエルの人口の53%(59万6618人)を含む最大のデータを用いて,ファイザーワクチンの有効性を臨床試験でない,リアルワールドデータ(実際の臨床現場から得られるデータ)として評価した研究が報告された.接種群と非接種群には59万6618人が含まれた.1回目の接種後14~20日目および2回目の接種後7日以上経過した時点でのワクチン有効性の推定値は以下の通りであった.PCR陽性の感染については,46%および92%;症候性感染者については,57%および94%;入院については,74%および87%;重症化については,62%および92%であった.死亡予防は,1回目接種後14~20日目で72%であった.PCR陽性感染者と症候性感染者に対する有効性は,年齢によらず一貫しており,併存疾患を有する人でも,有効性がわずかに低下する程度であった.以上より,ワクチンの有効性がリアルワールドでも示された.
(New Engl J Med. Feb 24, 2021(doi.org/10.1056/NEJMoa2101765))
◆ファイザーワクチン2回接種は変異株に対しても有効の可能性.
イギリス(B.1.1.7系統),南アフリカ(B.1.351系統),ブラジル(P.1系統)で初めて報告された変異ウイルスが世界的に広がっている.ファイザーワクチンの効果を検討するため,2020年1月に分離された初期のウイルスUSA-WA1/2020と,上記3つの遺伝子変異を組み込んだウイルス,さらに4番目として,B.1.351系統で見つかったN末端ドメインの欠失と世界的に優勢なD614Gの置換,5番目としてB.1.351系統で見つかった受容体結合部位のアミノ酸に影響を与える3つの変異(K417N,E484K,N501Y)とD614Gの置換を持つものを準備した(5種類).ワクチンの2回接種を行った臨床試験参加者15名から採取した20種類の血清サンプルを用いて,中和試験を行ったところ,すべての血清サンプルは,5種類すべてのウイルスを効率的に中和した.ほとんどの血清サンプルは,1:40よりも高い力価で中和した.また幾何平均中和力価は,順に532,663,437,194,485,331であった.USA-WA1/2020と比較して,B.1.1.7スパイクウイルスとP.1スパイクウイルスの中和はほぼ同等,B.1.351スパイクウイルスの中和も低いものの強固であった.以上より,ファイザーワクチンを2回接種すれば変異株に対しても防御できる可能性が高い.
(New Engl J Med. March 8, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2102017))