人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
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菅沼院長の元気で長生き講座
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第92回 元気で長生き講座【2019年12月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~透析量増加は長生き(良好な生命予後)をもたらすことが考えられます~

 

令和元年728日名古屋国際会議場で開催されました第7回日本腎栄養代謝研究会学術集会・総会にて、同会幹事になりました菅沼の同会最期の演題「超長期透析歴患者においても良好な栄養状態が得られる高血液流量透析 ~透析歴50年を目指して~」の発表内容をご紹介いたします。

 

高血液流量透析を行っている透析歴40年以上の本院超長期透析患者様3名と、40年以上の超長期透析患者様10名もの既報(鈴木正司、他.日本透析医会誌31:43-52,2016)との比較を行いました。その結果、導入時年齢、現年齢、総たんぱく(TP,副甲状腺ホルモン(i-PTH,カルシウム(Ca,リン(P)値に差はありませんでしたが、透析低血圧への対応で使用しているクエン酸含有無酢酸重炭酸透析液(カーボスター:CD)を用いたオンラインHDFを実施しており、平均spKt/V2.3、アルブミン(Alb)3.77g/dLと既報に比べ有意に高く、Hb値が高く貧血が軽度でありました。透析アミロイドーシスの要因とされているβ2ミクログロブリン(β2MG)の透析前の濃度は15.4mg/Lで、本院における透析歴40年未満の患者様に比べ有意に低い結果でした。透析前β2MG濃度と生命予後との関係は、透析前β2MG濃度が低ければ低い程生命予後良好が報告(日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況(20091231日現在).日本透析医学会, 2010 http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2010/p066.pdf)されています。維持血液透析ガイドライン:血液透析処方(透析会誌2013;46(7):587-632,2013)は、最大透析間隔の透析前β2MG濃度は30(可能なら25)mg/dL未満を達成できるよう透析条件を設定することが望ましいとしています。

 

透析量の増加により尿素除去率が上昇しますがRobert Aらが貧血改善及び尿素除去率上昇に伴い生命予後改善(AJKD:127-35,2005)を、KuraganoらがCDにて貧血(Hb<10の患者での有意なHb上昇)や栄養状態(Alb3.8の患者での有意なAlb上昇)の改善(Artif Organs 36:282-90,2012)を、報告しています。CDを用いた高血液流量透析にて超長期透析患者様でも良好な透析量(Kt/V高値)、栄養状態(Alb高値)Hb高値、β2MG濃度低値が得られており、生命予後良好の可能性が示唆されます。

 

本院における過去10年の平均粗死亡率は5.1%と全国平均9.8%に比べ有意に低く、高血液流量透析を含む透析量増加は、食事制限を緩和し、良好な生命予後や栄養状態をもたらす、超長期透析歴患者様にも適用可能な透析法と考えております。