第21回 元気で長生き講座(2013年8月号)
〜しっかり透析は代謝性アシドーシスの予防や改善にも有効です〜
腎不全が進行すると腎臓からの酸の排泄低下に伴い代謝性アシドーシスが出現(本来中性の血液が酸性になり重炭酸(HCO3)濃度が低値となります)し、栄養障害や異所性石灰化(動脈壁や関節等の骨以外の場所に石灰化が起こる事)の原因になる事が知られています。
異所性石灰化は、重炭酸濃度が高くなりすぎるオーバーアルカローシスでも起こると理論的には言われていますが、昨年、神奈川県の湘南鎌倉総合病院より、透析前重炭酸濃度が低値であるほど、冠動脈(心臓の動脈)における石灰化の程度がむしろ強い事が報告(Ther Apher Dial. 16(3):267-271. 2012 :左図)され、異所性石灰化予防のためにも代謝性アシドーシス改善が重要と考えられます。
代謝性アシドーシスの有無は血液ガス検査にて明らかになります。透析医療でも血液ガス検査を含む主な採血検査は多く行うほど透析施設の利益が少なくなる「まるめ」と呼ばれる保険体系に現在なっており、コストのかかる血液ガス検査を全く実施していない施設が多くあります。一方、本院では二ヶ月に一回を目安に透析患者様の血液ガス検査を実施しており、代謝性アシドーシスを認めた場合、保存期腎不全患者様においては腎不全の進展予防に有効とされるアルカリ化剤(重曹:炭酸水素ナトリウム)の投薬、透析患者様においては生命予後改善につながると考えられる透析量の増加もしくは、アシドーシスを来す事があるものと来しにくいものがあるリン吸着薬の調整等を行っております。
透析量増加の方法は、
1.透析回数
2.透析時間
3.血流量(QB)
4.ダイアライザ膜面積
の順に増やす事をお勧め致します。十分な透析量の確保(しっかり透析)により栄養障害や異所性石灰化を来しうる代謝性アシドーシスを予防し「元気で長生き」を実現させましょう!