第44回 元気で長生き講座(2015年7月号)
~しっかり透析と野菜摂取の勧め~
本年3月に広島で開催された日本医工学治療学会第31回学術大会に参加し菅沼も口演して参りました。JA長野厚生連佐久総合病院統括院長伊澤敏先生の「長寿日本一長野県の取り組み」と題した特別講演を拝聴致しました。
平成25年2月28日に厚生労働省から発表された「平成22年都道府県別生命表」によると、菅沼の出身県である長野県の平均寿命は男女とも全国1位。また、平成22年の健康寿命のうち、「日常生活動作が自立している期間の平均」も男女ともに全国1位でした。
長野県ではその要因を分析し、得られた知見を地域の医療提供体制の充実や健康づくり活動の展開等の施策に役立てることを目的として、5か年にわたる研究事業を開始しています。平成25年2月に公表された「信州保健医療総合計画~『健康長寿』世界一を目指して~」(平成25年度~平成29年度)によると、長野県民の長寿には次の要因との関連が指摘されています。
①高齢者の就業率は全国トップ(2010年国勢調査)であり、生きがいを持って生活している。
②男女とも野菜摂取量が全国1位であり(2012年国民健康・栄養調査)、郷土料理・伝統料理を有効に活用した食生活を送っている。
③生活習慣病予防や孤独な生活の防止につなげる食生活改善推進員、保健補導員ら健康ボランティアによる自主的な健康づくりへの取組や活動が盛ん。
④医師、歯科医師、薬剤師、保健師、管理栄養士等の専門職種による地域保健医療活動が活発。
①に関し、日中お仕事をされている透析患者様の為にも本院においても準夜透析を今後も継続したいと思いました。菅沼が特に注目したのは②男女とも野菜摂取量が長寿日本一長野県は全国1位であった点です。果物や野菜にはカリウム(K)及びビタミンCが多く含まれています。透析前Kはむしろやや高値(5~5.5mEq/L)の透析患者様が最も長生きされている事をこれまでにもご紹介しております。
松田昭彦先生は、論文「PD患者のエリスロポエチン抵抗性貧血に影響する因子の検討」(腎と透析63巻別冊腹膜透析2007p192~194,2007)にて、多量の造血ホルモン製剤投与でも貧血改善が不十分であった腹膜透析患者様に対し、ビタミンC投薬を行った結果、有意に貧血が改善し、体内に貯蔵されている鉄量の指標であるフェリチン値が有意に低下した事を報告しておられます。透析患者様における貧血もフェリチン値も生命予後との関連が報告されています。
果物や野菜に含まれるビタミンCは鉄の利用を促進し、貧血改善効果が期待されます。一方で、果物や野菜の過剰摂取は透析前K6mEq/L以上の高K血症が危惧されますが、透析量(透析時間、血流量や血液浄化器膜面積)を十分に増やすことで、尿毒素と共にK除去が促進され、高K血症は予防出来る事が期待されます。
透析量が多い透析患者様が長生きされている事も分かっており、しっかり透析し、しっかり野菜を摂取する事で「元気で長生き」が期待出来る事でしょう!