第29回 元気で長生き講座(2014年4月号)
〜坂井瑠実先生の講演をふりかえって:P/蛋白比とHDP〜
先月16日(日)、腎内科クリニック世田谷患者会講演会にて、本院太田垣技士長及び坂井瑠実クリニック理事長坂井瑠実先生による講演が行われました。当日は多数の患者様にお集まり頂き誠に有難うございました。
坂井瑠実先生より国内で透析が始まった頃の大変な時代のお話をいただき、透析患者様におかれましては維持透析により救われるようになった命を大事にして欲しいと思いました。
お話の中で印象的だったのは、高リン(P)血症は異所性石灰化等をもたらし、生命予後不良につながる事が知られていますが、
1.蛋白質制限でP低下、
2.P吸着薬でP低下、
3.透析量増加でP低下
の3群で、1.の蛋白質制限でP低下した群が最も成績が不良で、蛋白質はしっかりと摂取すべきであるとのお話で、やはり、蛋白質摂取でも来たしうる代謝性アシドーシス、尿素窒素(UN)上昇や高P血症に対しては、蛋白質制限ではなく、P吸着薬や透析量増加にて対応すべきと考えられます。蛋白質を含む食品でもPの少ないP/蛋白比の低いものとPの多いP/蛋白比の高いものがあり、管理栄養士さんの今回の記事でその食品例が紹介されています。P/蛋白比の低い食品を積極的に摂りましょう!
HDP(Hemodialysis Product :ヘモダイアリシスプロダクト)という言葉が登場しました。Scribner医師とOreopoulos医師が提唱する適性透析の指標で計算は、「1週間あたりの透析回数×1週間あたりの透析回数×1回透析時間」で求めます。HDPは高値ほど適正な血液透析で70以上が推奨されると述べられています。
週3回4時間透析でHDP = 3× 3× 4 = 36、
5時間でHDP = 3× 3× 5 = 45、
6時間の長時間透析でHDP = 3× 3× 6 = 54と上昇し、
週3回では1回8時間でHDP = 3× 3× 8 = 72でHDP70以上が達成されます。
在宅血液透析(Home Hemodialysis :HHD)で通常可能となる週4回透析では1回4.5時間であっても、HDP = 4× 4×4.5 = 72となり、HDP70以上が達成でき、週4回では中2日が無くなる事が最大の利点です。
腎内科クリニック世田谷でもHHD患者様におかれましては、
1.中2日をなくして頂く事、
2.HDP70以上の透析実施
をお勧めしております。週3回4時間は、あくまでも最低限であり、元気で長生きする為には不十分である可能性が考えられ、透析時間の延長やHHDを今後もお勧めする所存です!