第68回 元気で長生き講座(2017年8月号)
~リン(P)吸着薬の内服や透析量増加により適切なP値を目指しましょう~
リン(P)値が6を超えてしまった高P血症は骨以外の関節、心臓の弁や血管壁等への石灰沈着が起こる異所性石灰化を来し、適切な値にP値をコントロールすることで良好な生命予後(長生き)が期待出来ます。異所性石灰化予防や生命予後の観点から、日本透析医学会「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」においてもまずP、次に補正カルシウム(cCa)、副甲状腺ホルモン(PTH)の値の順にコントロールすべきと記載されています。1.蛋白質制限でP値低下、2.P吸着薬でP値低下、3.透析量増加でP値低下の3群で、蛋白質制限でP値が低下した群が最も成績不良が報告されており、栄養維持や生命予後の観点からも十分な蛋白質を摂取すべきで、蛋白質摂取で生じうる代謝性アシドーシス、尿素窒素(UN)上昇や高P血症は、蛋白質制限ではなく、リン吸着薬や透析量増加にて対応すべきと考えられます。P吸着薬は医学の進歩により、従来型のCa含有のみならず異所性石灰化予防に役立つ各種のCa非含有P吸着薬(表)が登場し、近年鉄含有P吸着薬(リオナ/ピートル)も内服可能となり、貧血の改善にも役立ちます。cCa値、鉄の状態や血液ガス検査結果等に応じ、P吸着薬の使い分けを行います。例えば、cCa値上昇があればCa含有P吸着薬(カルタン)でなくCa非含有P吸着薬を優先し、鉄欠乏状態があれば鉄含有リン吸着薬を、血液ガス検査にて代謝性アルカローシスがあれば蛋白質摂取と共に塩酸セベラマー(フォスブロック/レナジェル)を、逆に異所性石灰化等のリスクにもなる代謝性アシドーシスの改善が不十分であればその是正に役立つ透析量増加やクエン酸第二鉄(リオナ)内服をお勧めします。
一部の患者様におかれましては肥満に注意が必要ですが「しっかり食べて動いてしっかり透析」と共に、P吸着薬は透析患者様にとって最も大切な主要な薬剤であり、しっかり内服頂き「元気で長生き」を実現させましょう!